意外にご存知の方がいないようなのですが、JIDとジェイリースは一般社団法人を持っています。そして、どちらも奨学金を支給しています。利益を上げている会社として社会へ還元しているものなので、大変に素晴らしいと思います。
しかし、JIDとジェイリースの姿勢というか、理念というか、違和感がありますのでちょっとご紹介いたします。
2016年9月にJIDが設立した一般社団法人。
小学生・中学生には給付(返還義務なし)の奨学金、高校生・大学生には無利息の奨学金を支給されます。
2018年5月にジェイリースが設立した一般社団法人。
視覚障がいを持つ大学生または求職者に奨学金やサポートを行う。
違和感の正体は何か?
JID財団は立派だと思います。少なくとも傍目には大変有意義なことだと見えます。疑問に思ったのは中島拓奨学基金の方です。
なぜ社長個人の名前なのか?JID財団はJIDという会社名を使っています。一番分かりやすい方法です。対して、中島拓奨学基金は代表取締役社長である中島拓の個人名を使っています。
個人名でも一向に構わないといえば構わないのですが、なぜ個人名なのかは考えてしまいます。JIDの場合、井坂泰志の社長時代(現会長)に設立をしています。そして、現社長に代替わりをしても社団法人名はそのまま使えます。当然です。
設立者の氏名を使うことで、代替わりをしてもそもそもの発端が分かるという点では名前はありだと思います。カーネギー財団などを考えればありだと思います。
しかし、氏名を大々的に使うほどのものなのか?と少し違和感を覚えました。
なお、中島拓奨学基金のサイトを見ると、ドメインはnh-shogakukikin.jp、英名はNakashima Hiraku Scholarship Foundation、コピーライトはNakashima Hirakuだそうです。
すべて代表の個人名一色。特にコピーライトは代表個人ではなく、一般社団法人名になるのが正しいはずです。
理事長の顔が見えないサイトを見返して思ったのは、中島拓奨学基金には写真がほとんどありません。別にイラストでもよいのですが、文字中心と感じました。別に写真やイラストが重要なわけではありません。
JID財団には理事長の顔写真があるのに対し、中島拓奨学基金には基本的に文字だけです。ただし、中島拓奨学基金では視覚障がい者を対象にしていることから、画像があっても見えないことを想定しているのかもしれません。
実際、中島拓奨学基金のサイトには背景色を青(標準)と黒で切り替えられます。私なんかは背景色を黒にすると違和感がありますが、視覚障がい者にとっては色のコントラストがはっきりするので読みやすいというのはあるのかもしれません。
目的は何か?当然、どちらも社会貢献なのでしょうが、JID財団は小学生~大学生までの奨学金であるのに対し、中島拓奨学基金は視覚障がいのある大学生・社会人を対象としています。
なぜ、視覚障がい者だけなのかは、設立者の中島拓も目に病気があったことが起因しているようです。

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保証会社イントラストは元々は家賃債務保証だけを行っている会社でしたが、現在では医療費保証、介護費保証、養育費保証も行っていますので主に4つの事業を取り扱う総合保証会社です。
家賃保証に関していえば競合ですが、正直なところ医療費保証、介護費保証、養育費保証の3つは専門がすぎて市場規模も戦略もまったくわからないというのが実情です。
なお、トータルではしっかり利益を上げているイントラストですが、家賃保証でいえば東証一部に上場している割には規模が小さいな、という印象です。というよりも従業員が96名(2019年)ということを考えれば、まずまず規模はあるという感じだと思います。
そんなイントラストが12月11日に
第15期中間報告書で興味深いことを公開しています。
「株主の皆様から寄せられた声にお答えいたします。」のコーナーでは3つの質問があがっています。
- 立て替えた医療費は回収できるのか?
- 介護費用保証について
- 養育費保証の市場ニーズと動向について
立て替えた医療費のその後はどうなるか?
イントラストとの医療費保証について、私がわかっていませんので以下は推測がたぶんに入ります。
イントラストの医療費保証とは、入院などで身元保証人(連帯保証人)にイントラストがなるという意味だと解釈しています。通常、病院に入院するときには保証人が必要です。それなりに高額になると本当に支払えるかがわからないからです。そこで書類に住所、氏名、電話番号を書くわけですが、病院の審査はザルです。病院は医療機関であり、審査機関ではないからです。病院は信用情報機関に照会もしませんし、審査ノウハウを持っているわけではありません。
病院の保証審査は書類さえ出せば通るのが普通です。保証人に電話確認すらしないこともあるそうです。たぶん、フォーシーズの審査率よりも高いです。
当然、病院には回収ノウハウもありません。数年前ですが、病院の事務局の人が医療費を払わない人に督促、というかもはや支払いのお願いをしているのテレビの特集を見ましたが、まったく回収できないやり方で交渉しています。
そういう意味ではイントラストの医療費保証には需要はあり、将来性はあると思います。
しかし、私は思うのです。病院の保証人にイントラストが介入すると、審査で落ちた人はどうなるのか、と。近年では医療費の踏み倒しが増えたとはいえ、母数を考えれば微々たるものです。それでも病院には相当な負担ですけど。確率論でいえば、ほとんど遅れないものに対して保証するという点では家賃保証に近しいものを感じます。
イントラストは事業として医療費保証を行っていますので審査をすると思います。つまり、今まで雑だった審査が審査として機能するわけです。その審査に通った人はまず医療費を遅れない人です。
それでもなお、遅れた人にはイントラストが回収に動きますが、遅れながらも回収は可能でしょう。そして、中間報告書によると次のようにあります。
万が一回収できなかった場合でも、大手損害保険会社に保険をかけているため、追加で資金が発生することはありません。
中間報告書は株主に対しての報告書ですから、内容はこれで問題ありません。会計上の安全性に問題がないなら株主も安心するからです。
しかし、保証会社が延滞時の担保に保険会社をかけているということは、医療費の保証を行った際に受け取っている保証料を保険会社に回してリスクヘッジしているわけです。中間マージンを抜いて下請けに回す図を想像してしまいます。
だったら最初から病院は大手損害保険会社に依頼した方が安いと思います。が、このあたりは大人の事情もあるのでしょう。
そして、イントラストの審査に通らなかった人はどうなるのか?病院はイントラストなしで保証人だけで受け入れるか、病院を受け入れないかのどちらかでしょう。しかし、病院の存在意義からすれば「保証人が要る段階の病人」を受け入れないのはどうかと思います。(このあたり、病院の事務局の経営的な心情は抜きにしています。)
ということは、イントラストが保証しているのは医療費が遅れない属性の人であり、病院がイントラストなしで受け入れた人は医療費が遅れる属性の人と言い換えられます。
これって、意味なくないですか?
結果的には医療費の高騰の原因になりそうです。ただし、上記の事実をさらに言い換えると『イントラストが保証している案件は遅れても非常に高い回収率を維持』できるとなります。
イントラストが回収率(この場合、経営安定性)を前面に打ち出しブランド価値を高めるつもりなら、相当に強かといえます。
介護医療費保証について
介護医療保証が何のことかわかりませんでしたが、中間報告書を読んで理解しました。中間報告書には次のようにあります。
介護費用保証とは、高齢者向け住宅に入居する際のさまざまなお悩みを解決できる商品です。
パッと見では、賃貸アパートや賃貸マンションで積極的に高齢者を受け入れる不動産会社やオーナー向けの家賃債務保証とも見えますが、中間報告書には「施設運営者」という言葉が出ることを考えると、老人ホームや老人介護施設に入る際の保証人のことをいっているのでしょう。
この場合、支払いが遅れて立て替えをした際に、どうやって回収するのかは分かりませんが、保証会社としての仕事をしているのでよいとしましょう。
私はこういう施設の法律関係は詳しくありませんが、もしかしら居住権を主張できずに、すぐに退室することができるのかもしれません。
養育費保証のニーズと動向について
中間報告書によると日本では年間22万件の離婚があり、6割は未成年の子供がいる離婚だそうです。情報源が厚生労働省ですので信頼できる数値です。
そして、養育費をちゃんと支払っているのは3割弱だそうです。私も散々経験していますが、シングルマザーの家賃延滞率はやはり高いですので事情はよくよくわかります。子供のその後を考えると心が痛みます。
では
養育費はどのくらいかというとアディーレ法律事務所がまとめています。なお、アディーレが参考にした出展は司法統計年報3家事編平成22年というのでこれも信用できます。
なんと、子供が1人の場合は6万円以下が80%超。子供が2人でも8万円以下が80%超です。
月々に子供にかかる費用がこれだけで足りるのかは非常に疑問ですが、ここではイントラストの体質のことを議題にしていますので、ドライに考えていきましょう。
ビジネスとしてはぜんぜんありだと思います。需要があるので保証する。考え方は非常によいと思います。私が疑問に思ったのは市場規模です。
アディーレの資料を参考に月6万円として、イントラストのいう年間離婚件数22万件の6割に未成年の子供がいて、養育費を支払っているのは3割と仮定します。
養育費を支払っていないのは 22万件 × 6割 × 7割 なので約9万件。これに6万円をかけると大体の市場規模が出ると思います。ということは市場規模はたったの55億円!?
55億円のすべてをイントラストが独占できるのであればそこそこなのでしょうが、9万件のうち何割がイントラストを利用するかを考えると売上もかなり限定されるでしょう。
2018年10月の兵庫県明石市が保証会社を使って養育費を支援するという記事を参考にすると年間保証料は1万円のようです。
記事をよくよく読むと年間保証料は1ヶ月分(つまり6万円前後?)の可能性がありますし、そもそもこの記事ではイントラストという言葉が出てきません。さらに、1万円という数字は役所を通す際の特別価格かもしれません。しかし、
私は2018年10月の時点で養育費保証をしている会社としてはイントラストだと推測しています。では、9万件 × 1万円を考えると9億円ですから、すべての案件をイントラストが確保できれば年間9億円の売上にはなりそうです。(仮に年間保証料が1ヶ月分であれば、平均で6万円前後が想定されますので、50億円を超える売上が見込めます。)
離婚時の養育費案件すべてを囲って年間売上9億円ではスケールは難しそうです。単価が上がれば別ですが。

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最近、GAテクノロジーズがイケイケのようです。
当ブログを読んでいる方はお分かりでしょうが、GAテクノロジーズは不動産テックを扱うIT企業です。基本は不動産屋ですが、子会社にリーガル賃貸保証とイタンジがあります。
以前、私は
2019年、GAテクノロジーズは伸びますと紹介しました。では実際、どうだったのか振り返って見ましょう。
2019年2月1日時点のGAテクノロジーズの株価は3,300円です。その後、徐々に下落を続け、3月8日には2,624円まで落ちています。しかし、持ち直して7月19日には4,615円まで高騰しています。この7月19日の4,615円は今年の最高値になりそうですね。
ですが、9月初旬に暴落して2,704円まで下がっています。その後、また持ち直して4,000円前後でうろうろしているのが現在です。
さて、この株価の動きを上がったとみるか、下がったとみるかは人それぞれですが、私を信じて2月に買って現在でも持ち続けている人は700円買っているわけなので、まーまー上がったんじゃないでしょうか。ざっくり20%上昇しています。
逆に私のことを信じきれず、しかも損切りに失敗した人は600円くらい損をしています。ざっくり20%負けています。
年末年始にかけてどうなるかわかりませんが、来年もまだ伸びると思いますよ。業界的にも。
ですが、リーガル賃貸保証が伸びているかは怪しい。家賃保証会社は民法改正の波に乗っているなんていいますが、果たしてリーガル賃貸保証がそこまで伸びているのだろうか?
ちなみに、相場の福の神、藤本氏の読みではイントラスト、Casa、ジェイリースは伸びると予想がありました。イントラストとCasaは目標株価までドンピシャです。ジェイリースは目標700円に対して今は310円ですから大分外しています。しかし、3社買っていればトータルでは買っていますので、相場の福の神、さすがだな、という感じです。
ん?ジェイリースが310円って、割安じゃないか?と私は思います。私を信じて買うのは勝手ですが、例によって自己責任でお願いします。
なお、冒頭で紹介したGAテクノロジーズは
高級賃貸サービスサイト「モダンスタンダード」を子会社化し、さらに
「株式会社RENOSY X(リノシー クロス)」を設立だそうです。
これはますます不動産テックが加速しそうです。

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2017年5月~12月も更新が止まっていましたが、今年もまた止まってしまいました。理由は
前回とまったく同じですが、何の言い訳にもなりません。すみません。
またボチボチ更新していきますのでどうぞ、よろしくお願いいたします。
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