元々、回収率が高すぎました。立替額の98%程度を回収していると公式発表がありますが、業界的にはありえない数値です。もっとも、数値の根拠となる立替額、回収額、計算式などは非公開でしたので多少の数字のトリックはあったのでしょうが、それにしても高い数値です。
改善報告書の中身に触れていますが、ポイントは下記5点です。
- 計算方法を、取れない人からは取れないと決めた
- 取り立て不能理由は死亡や破産
- 九州で営業していた頃は回収率は高かったが、全国展開したら低くなった
- 九州の頃は連帯保証人がいた
- 短期的な延滞を回収し、中長期延滞は放置していた
計算方法を取れない人からはとれないと決めた
取り立て不能理由は死亡や破産
これは夜逃げした人の分を回収不能としたと解釈できます。報告書には取り立て不能理由を死亡や破産としていますが、割合的に死亡や破産は非常に少数です。断言しますが、死亡や破産の数値を予想数値で高めに出したとしても貸倒引当金の再計算をしなおさなければならない事態にはなりません。
九州時代は回収率が高かった
これは地方で創業した家賃保証会社にありがちな話です。今でも法律の縛りはありませんが、以前は法律どころか自主ルールや自社コンプライアンスもありませんでした。回収方法についてはノールールでした。
失礼な言い方ですが、家賃を遅れている人にも知識が無くも相当無理やりな回収をされても仕方がない、という風潮がありました。それが全国展開すると売上額、件数は圧倒的に一都三県に集中します。要は東京の比率が極端にあがります。
東京での延滞と地方での延滞の違いは滞納者側の知識量です。これは圧倒的に違います。
雑な言い方ですが、東京の家賃滞納者はずるがしこいです。家賃が遅れたことが悪いと認識しつつも強靭な取立てには果敢と立ち向かいます。
過去に家賃保証業界全体が追い出し屋と言われていた時期がありましたが、この時期はちょうど地方創業の家賃保証会社が東京に進出した時期と重なります。つまり、地方で無理やり回収していた保証会社が稼げると思って東京に行って同じ事をやったらあっという間にジャーナリストのエサになったというわけです。
ただし、これは強靭な回収をした保証会社側が悪いです。
九州時代にはどんな方法をとっても回収した、それが東京に来て悪化したというのはこういうことです。そもそも回収率が悪化といいますが、現時点でも回収率は非常に高い水準を保っています。これは回収率の計算方法が独自だったということに他なりません。
九州時代には連帯保証人がいた
これは回収率にはそれほど影響しません。本来は連帯保証人は、その立場上、家賃が遅れたら問答無用で即支払いをしなければなりません。しかし、実際には連帯保証人であっても支払いをしない人は物凄く多いです。だからこそ保証会社が台頭してきました。
ただ、払う気がないとは言っても連帯保証人がいる限り請求はできますので、前述の通り、どんな手段を使ってでも回収していたことは想像にかたくありません。
短期的な延滞を回収し、中長期延滞は放置していた
家賃回収は初動がすべてと言っても過言ではないほど重要です。遅れた人に対して即行動することが回収率の向上に繋がります。それがわかっているので保証会社は家賃滞納に対して即行動します。これが短期的な延滞を回収する実態です。
そして、遅れてすぐ動いても回収できなかった場合、次月になると新しい家賃延滞が来ますのでそちらを優先して動きます。そうすると遅れ続けるほど回収行動を取らなくなる傾向にあります。結果、中長期で家賃滞納が続くことになります。
では長期間回収できなかった場合、保証会社は何をするのか?
これは3つしかありません。
- 裁判をして合法的に退去させる
- どんな方法を使ってでも退去させる
- 家賃滞納が続くがそのままにする
今後、動きに注目です。
仮に、訴訟費用がかさんだなどというレポートが公式から出たら要注意です。今まで非常に高い回収率を保ってきた会社です。これは、裁判をほとんどしたことがないと想像できます。だから今まで貯まりに貯まった回収できない人の分を新しい計算方法で貸倒引当金として計上し、更に裁判費用がそれだけ出るということです。
1回の裁判費用は物凄く掛かります。裁判は長引けば長引くほど費用が掛かります。
このあたりを報告書をおもしろいと書いたわけです。
しかし、確かに業界人でもなければあの報告書を読んで上の考えには至らなかったかもしれません。

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