あんしん保証はもともと賃貸あんしん保証という社名でした。当時(2015年頃まで)はまだぜんぜんパッとしない、いわゆるその他家賃保証会社の1つだったと記憶しています。家賃保証会社と言っても100社以上あると言われていますので(先日紹介した、中間管理職劇場◯◯の女のCasaの記事では200社以上とあります。)ぜんぜん目立っていませんでした。
それが一気に変わったのは2015年です。2015年7月に社名を賃貸あんしん保証からあんしん保証に変更し、2015年11月にマザーズに上場しています。
今では家賃保証会社の上場は普通ですが、家賃保証会社を子会社に持っている会社の上場はあっても、家賃保証会社の上場はありませんでした。リプラスという家賃保証会社はありましたが、2008年に倒産しています。
そのため、家賃保証会社が上場したというのは珍しかったんですね。話題になりました。
しかし、その後、ジェイリース、Casa、イントラストと家賃保証会社が上場し、この3社は今では東証一部上場企業です。一方、あんしん保証は今でもマザーズです。
マザーズが悪いと言っているのではないのです、ただ、どうしても肩書きを見てしまうと見劣りするな、ということです。
そんなあんしん保証です。2月15日の記事で紹介しましたが第3四半期決算短信でいろいろ見えてきました。
通期の売り上げ予想は32億円です。負債は12億円ですので売上に対する負債は多いように見えます。それでも投資と考えれば全く問題ないのですが、イメージはよくないですね。
そして、3月19日にまた借り入れの情報が出てきました。
概要はこんな感じです。
みずほ銀行 6億5,000万円
第四銀行 1億5,000万円
三井住友信託銀行 1億円
あおぞら銀行 1億円
合計 10億円
借り入れ理由についての公式情報です。
「あんしんプラス」(事前立替型自社保証商品)の販売増加による家賃等の立替の増加で、金融機関から資金調達するものです。借入期間は、収納代行会社から口座振替資金が当社に入金されるまでの間で、翌月上旬には口座振替資金が入金されるため、これらの借入は、借入を行った翌月上旬までに全額返済しております。
今後も毎月中旬に金融機関より同程度の金額・条件にて借入を行います。また、資金の状況によって借入を行った当月末日までに一部返済をし、借入を行った翌月上旬に全額返済する場合もあります。
業界的には普通のことを書いていますが、家賃保証業界にいない方、不動産に聡くない方には難しいことを言っているかもしれません。
3行で書くと
お金は借りたけど、毎月にすぐに入ってくるお金だよ
すぐに返すけど、すぐにまた同じ金額を借りるサイクルだよ。
ぜんぜん大丈夫だよ、ホントだよ
ということです。
解説します。
家賃保証会社の家賃立て替えには3つの方法があります。
1つ目は、通常の代位弁済方式です。
これは管理会社(または家主)に家賃が入ってこなかったときに管理会社から家賃保証会社に、誰のいつの分、いくらが遅れたという報告をします。家賃保証会社ではこの家賃延滞報告が届いた分を立て替えます(管理会社に振り込みます)。だから家賃が遅れたとしても管理会社からの家賃延滞報告が届かなければ、家賃を立て替えることはありません。だって、家賃保証会社には家賃延滞を知るすべがないからです。
2つ目は収納代行方式(今回の方式)です。
上の代位弁済方式では、家賃の支払先は管理会社(または家主)です。現金でも、引き落としでも、振り込みでも、カード払いでも何でもよいですが、代位弁済では家賃を管理会社に振り込むかどうかで家賃延滞が決まりますが、この収納代行方式では管理会社にかわって家賃の集金を家賃保証会社が行います。つまり、そもそもの家賃の振込先が家賃保証会社です。
そのため、家賃保証会社は毎月、収納代行方式の契約の入居者の家賃を全て引き落とし、管理会社に送金します。この時に引き落としができなかった入居者に対して回収行動を取ります。管理会社とすると家賃が遅れることがありませんし、家賃延滞報告を送る必要もありませんので手間がなくなります。その意味では非常に便利な方式です。収納代行だと、今度は管理会社側で家賃延滞を知るすべがありません。そのため、家賃保証会社では別の方法で誰の何月分が遅れたのかを管理会社に通知しています。
この収納代行で、入居者から引き落とし、その後に管理会社に送金すれば家賃保証会社の手出しはありませんのでまったく問題ありません。しかし、事前立て替え型の場合には入居者から家賃を引き落とす前に管理会社に送金します。そのため、送金するだけの現金を先に手元に用意しないといけません。送金さえできれば、そのすぐ後に入居者から引き落としができるのでキャッシュフローとしては問題ありません。
ここまで読んで、引き落として管理会社に振り込むだけの簡単なお仕事です、だと思った方もいるかもしれませんが、実際にはそこまで簡単ではないです。なぜなら、引き落とせない入居者も一定割合でいますので、その方に対して回収できない分は完全に家賃保証会社の手出しです。
例えば、10億円引き落として10億円送金する。これは資金という意味では簡単です。転送するだけですから。
では、8億円しか引き落とせなくて10億円送金する。これだと2億円が家賃延滞していますので、この分を回収しないといけません。
今回のように事前立て替え型では、10億円送金して、引き落とし日には8億円しか入らなかった!だから2億円不足、ということです。この最初に送金する10億円の補填のための資金調達が今回の借り入れの理由だそうです。
代位弁済にしても、収納代行にしても家賃が遅れたら立て替えるのは同じなんだからどっちでも同じじゃない?と思うかもしれませんが違います。
代位弁済の場合には家賃延滞報告が届かなければ家賃保証会社は立て替えません。管理会社が自分で勝手に回収した場合、管理会社と入居者で支払日を勝手に調整した場合、管理会社が報告を忘れた場合など、代位弁済には立て替えなくて済む場合がかなり多くあります。
家賃保証会社の立場として、立て替えができない、というのはかなり危ないので(実際に、家賃保証会社が資金不足で立て替えができなかった例は過去に何例もあります。)信用を確保するための資金調達だと思います。
なので、事前立て替え型収納代行のキャッシュフロー安定のための借り入れというのは分かります。
私が疑問なのは、銀行が分散されすぎじゃないですか?という点です。
10億円必要で、借り入れ金利の都合で安いところから優先的に借りて、残りをみずほ銀行から6億5,000万円調達した、とも見れますが、メインバンクのみずほ銀行からは6億5,000万円しか融資審査がおりなかったので、残りの3億5,000万円をかき集めた、とも見れます。
※メインバンクがみずほ銀行かどうかは知りません。
第四銀行とか聞いたこともないので調べてみると本店は新潟にある銀行です。伝手があったのでしょうか?借りられるところを探した結果でしょうか?

え?家賃保証会社の立て替えの3つ目を話していない?
3つ目はクレジットカード払いなのですが、こちらはゴニョゴニョ・・・興味がある方は自分で調べてみてね♥
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