家賃を、入居者がカードで支払う、管理会社が受け取る、カード手数料を支払って、自分のところの管理手数料を引いて家主に送金する。これが普通の賃貸借契約の家賃決済にクレジットカードを利用した場合。
家賃が10万円、カード会社への手数料5%、管理会社への手数料10%と仮定して、管理会社がカード手数料を払った場合、家賃10万円に対して、カード会社は5000円の利益、管理会社は5000円の利益、家主は9万円の利益。同じ条件で家主がカード手数料を払った場合、家賃10万円に対して、カード会社は5000円の利益、管理会社は1万円の利益、家主は8万5000円の利益。
カードで支払った場合には1%程度のポイントがつくので、入居者は1,000円相当分のポイントがつく、つまり値引きになると言い換えてもよいわけだ。家主がカード手数料を払った場合と書きましたが、実際にはそうなる事はまずありません。家主はローンを組んでマンション経営をしている事も多く、収入が減ると即ローンの支払いに影響するので少しでも下げたくありません。管理会社からカードの手数料は家主に払ってくれと言っても、家主からすれば管理さえしてくれれば何処でも良いので、手数料を家主に押し付ける不動産会社は即切って、新しい管理会社を探すようになるでしょう。そうなると管理会社は大事な顧客を失うのでカード手数料を負担するのは普通は管理会社です。
そうすると、上記条件(家賃10万円、カード手数料5%、管理手数料10%)でクレジットカードの導入前、導入後ではポイントを加味して、
入居者 10万円支払い → 9万9000円支払い
管理会社 1万円 → 5000円
家主 9万円 → 9万円
カード会社 0円 → 4000円
あら、不思議。10万円で世の中が回っていたのに、9万9000円で世の中が回るように!?管理会社、大打撃です。売上が半分になりました。カード会社はどう転んでも儲ける仕組みです。今までは管理会社が管理しているんだかしていないんだか分からない状況で10%を取っていたので、管理会社がどう転んでも稼げる仕組みだったのですが、この管理会社を見事に食い物にしたのがカード会社ですね。クロ詐欺みたいですね。
話しはこれでは終わりません。面倒なことに保証会社がカード払いの話しに乗ってきました。保証会社の理屈はこうです。管理会社が売上が半分になるのは大変でしょう、でも今時、家賃のカード払いはやっておかないと時代に乗り遅れますよ。他社はみんなやっていますよ、カードの手数料は保証会社が持ちますから大丈夫ですよ!では保証会社は損をするのか?
実は、保証会社は損をしないように商品開発して損をしています(泣)。少なくとも、私には損をしているように思える。
保証会社が損をしなくてすむように、各社保証料を毎月少額とっています。推測ですが、どこの保証会社も考えることは同じで、カード払いで手数料を自社で持たないと管理会社に見放される(というか、管理会社はカードを使わないといけない理由がない)ので自社でカード会社の手数料5%を負担して、代わりに保証料を毎月取る形に変えています。
では保証会社が損をしないように、毎月5%分の保証料を取って上の例で導入前、導入後を見てみましょう。
入居者 10万円支払い → 10万3950円支払い
管理会社 1万円 → 1万円
家主 9万円 → 9万円
カード会社 0円 → 3950円
保証会社 0円 → 0円!?
なんと!?驚いたことに、ポイントを加味しても入居者の支払いが増えました。保証会社は取ったはずの保証が消えてなくなっています。保証会社の導入前が0円なのは、カードを導入しないという事は最初の保証料と1年に1回の更新料がかかるというので毎月は0円です、という意味です。カード会社はどう転んでも稼げる仕組みになっています。
もし、保証料か更新料を取らないとして、3950円×12ヶ月=47400円。つまり更新料が5万円(家賃の50%)だったとすると入居者は少し得をする可能性があります。ただし、保証会社は一銭も儲かりません。
では保証会社が毎月取る保証料を6%にするとどうなるでしょうか。
入居者 10万円 → 10万4940円
管理会社 1万円 → 1万円
家主 9万円 → 9万円
カード会社 0円 → 3940円
保証会社 0円 → 1,000円
保証会社を入れるのは連帯保証人をお金で解決している側面があるので、多少費用が上がるのは仕方がないとして、保証会社全然稼げねー、月1,000円ですよ。1年で12000円ですよ。これは回せない。入居者も家賃5,000円上げてまで住みたいだろうか。しかもこの金額はポイント還元分を全て現金で値下げしたと仮定した場合の数字です。カード会社はどう転んでも稼げる仕組みです。
う~ん。これはもう2択しかありません。
1つは、全国の全ての管理会社、全ての仲介会社、全ての保証会社が結託して、クレジットカードで家賃を払う事を当たり前にする。こうすると家賃にカード手数料が増えても、全案件が値上げなので入居者に不満がおきません。
もう1つは、クレジットカード払いなんてものを止める。そもそもの原因を消したのだから問題が発生しない。これに尽きます。確か、孫子は戦わずして勝つのが正しい勝ち方、みたいなことを言っていました。
そうか、だからオリコやエポスは稼げているのか。

世の中にはクレジットカードを作りづらい人がいます。芸能人やフリーランス、作家の方など、いわゆる企業勤めではない方です。そういう方への配慮も考えた方が良いのではないかと。
ご意見は info@hoshokaisha.jp まで
- 関連記事
-
-
アレモ、ラクーンホールディングスの子会社になる 2018/12/09
-
続・家賃保証会社フォーシーズは勝ったのか?最終局面は控訴審!? 2019/06/24
-
家賃債務保証会社の10社に1社は赤字!? 2018/11/18
-